ハチコウ大学講座

ハチコウ大学講座「----トイレめぐり----THE TOKYO TOILET~全17のトイレめぐり~第4回 恵比寿駅西口から広尾東公園」を開催しました

公開日

令和7年 11月14日(金曜日)

世界で活躍する16人の建築家やデザイナーの設計で、性別、年齢、障害を問わず、誰もが快適に使用できる公共トイレが区内17か所に設置されました。このトイレを舞台にした映画「PERFECT DAYS」も制作されています。本講座では設計者の紹介と各トイレのコンセプト、建築上の特徴などを詳しくご紹介しながら、全17のトイレを4つのブロックに分けてめぐります。今回第4回は恵比寿駅西口トイレから広尾東公園トイレまで、5つのトイレをまわりました。途中、恵比寿神社にも参拝しました。



まずは恵比寿駅西口公衆トイレを訪れました。




デザインは佐藤可士和氏(クリエイティブディレクター)。

おもな仕事に国立新美術館のシンボルマークデザイン、ユニクロのグローバルブランド戦略やふじようちえん、カップヌードルミュージアム等のトータルプロデュース等。「ユニクロパーク横浜ベイサイド」「くら寿司浅草ROX店」では、特許庁による日本国内初となる内装意匠に登録(2020年11月)されるなど、ブランドをアイコニックに体現するクリエイションを幅広い領域で展開している。文化庁・文化交流使(2016年度)、慶應義塾大学特別招聘教授(2012-2020)、多摩美術大学客員教授。著書「佐藤可士和の超整理術」(日本経済新聞出版社)ほか。2021年2~4月には「佐藤可士和展」が国立新美術館にて開催された。
佐藤可士和氏談
『清潔』『安心』恵比寿の駅前交番横のトイレは、毎日見る駅前のシンボルとして、極端に目立ちすぎない方がいいと考えました。入りやすく、使いやすく一歩引いた清潔な佇まい。恵比寿駅を利用する人々の気持ちが、少し明るく、清々しくなるように。トイレとして『当たり前な配慮』のひとつひとつに向き合ってデザインした『真っ白なトイレ』です。




途中、恵比寿神社に参拝しました。

旧社名を天津神社(あまつじんじゃ)というが、資料が乏しく縁起については不明。当時の御祭神は国常立神、豊雲野神、角杙神、意富斗能地神、伊邪那岐命、伊邪那美命の六柱で、大六天、大六様と呼ばれていた。昭和34年に区画整理で遷座させた際、町名あるいはヱビスビールにあやかって兵庫県の西宮神社から事代主命(恵比寿神)を勧請してこれを合祀し、恵比寿神社と改名された。家内安全、無病息災、五穀豊穣に御利益があるという。ところで渋谷区にはもう一つ、恵比寿ガーデンプレイス内(サッポロビール本社ビル横)に小さな恵比寿神の社がみられる。これは明治26年、サッポロビール株式会社の前身である「日本麦酒醸造会社」が同じく兵庫県の西宮神社から事代主命を勧請して工場内に創建された企業所有の神社で、こちらの方が歴史は古い。恵比寿ガーデンプレイスのオープンに伴い、平成6年より一般公開されている。


続いて、恵比寿公園トイレました。

デザインは片山正通氏(インテリアデザイナー)。
ワンダーウォール代表、武蔵野美術大学 空間演出デザイン学科 教授。代表作に、ユニクロ グローバル旗艦店(NY、パリ、銀座等)、INTERSECT BY LEXUS(青山、ドバイ、NY)、外務省主導の海外拠点事業 JAPAN HOUSE LONDON、虎ノ門ヒルズ ビジネスタワー(商業施設環境/ARCH)等。2020年、オランダのデザイン誌「FRAME」主催の「FRAME AWARD 2020」で2019年のフィリップ・スタルクに続きLifetime Achievement Awardを受賞。
片山正通氏談
念頭に置いたのは、建築的なものから距離を置き、遊具やベンチや樹木のように何気なく公園に佇むオブジェクトとしての在り方。日本におけるトイレの起源は川に直接用便する『川屋』(厠の語源)と呼ばれるもので、縄文時代早期に遡る。土で固められたもの、木材を結び付けて作ったものなど極めてプリミティブで質素であった。そんな佇まいをイメージしながらコンクリートでできた壁を15枚いたずらに組み合わせ、トイレでありオブジェクトでもある"曖昧な領域―現代の川屋(厠)"を構築。壁と壁の間を男性用/女性用/ユニバーサル・トイレという3つの空間への導入とするなど、人々が不思議な遊具と戯れるような、ユニークな関係性をデザインした。


続いて、東三丁目公衆トイレを訪れました。




デザインは田村奈穂氏(プリダクトデザイナー)。
New York City, Parsons School of Design 卒、工業デザインを専門にするSmartDesign を経て独立。現在はニューヨークを拠点に、コミュニケーションデザインを軸に、Issey Miyakeの時計から、パナソニックのグローバル展開、レクサスのイスタレーション、パリPalais De Tokyo美術館での展示等、幅広く活動中。IF DesignAward(独)、Red Dot Design Award(独)、 IDEA(米)、ミラノサローネサテリテ最優秀賞(伊)ほか、国際的なアワードを多数受賞。
田村奈穂氏談
年齢や性アイデンティティ、国籍や宗教、肌の色に関係なく、誰にでも訪れる生理現象を満たす場所、トイレ。けれど、個人のニーズというものが無限に多様であることがわかった今、社会が共有する『公衆トイレ』はどう変わっていけばいいのでしょう? 私の住むニューヨークの街ではLGBTQ+の人々が、自分の認識する性に正直に生きています。渋谷の片隅の小さな三角の土地にトイレをデザインするにあたり、彼らが、ありのままの『自分』を生きる姿を、ありのままを受け入れる社会を想像しながら突き詰めて考えてみた結果、トイレを利用するだれもが、快適な気持ちを同じように得られるために大切なのは、プライバシーと安全です。それを念頭に、個人の空間を再定義して3つの空間をデザインしました。造形のインスピレーションは、国際都市渋谷にやってくるビジターへのもてなしの気持ちをこめて、また、利用する人々を包み込む安全な場所にしたいという願いを込めて、日本の贈り物文化のシンボルである折形から得ました。社会に属するすべての人たちが、安全に、ハッピーに生活を営める社会に、そんな思いをデザインにこめたトイレです。

続いて、恵比寿東公園のイカトイレを訪れました。

デザインは槇文彦氏(建築家)。
1928年東京都生まれ。1952年に東京大学工学部建築学科を卒業し、アメリカのクランブルック美術学院及びハーバード大学大学院の修士課程を修了。スキッドモア・オーウィングズ・アンド・メリル、セルト・ジャクソン建築設計事務所に勤務する。1956年から65年まで、ワシントン大学とハーバード大学で都市デザインの准教授も務める。1965年に帰国、株式会社槇総合計画事務所を設立。1979年から東京大学教授を務め、1989年まで教壇に立つ。主な受賞歴は、1988年にイスラエルのウルフ基金賞受賞、1990年にトーマス・ジェファーソン建築賞受賞、1993年に国際建築家連合(UIA)ゴールドメダルとハーバード大学から贈られるプリンス・オブ・ウェールズ都市デザイン賞受賞、1999年にアーノルド・ブルンナー記念建築賞と高松宮殿下記念世界文化賞建築部門受賞。多数ある受賞の中でも、最も建築家にとって名誉あるプリツカー賞を1993年に受賞し、2011年にはAIAアメリカ建築家協会から贈られるゴールドメダルも受賞した。2024年6月6日、老衰のため死去。95歳だった。死没日付をもって従四位に叙されている。
槇文彦氏談
このパブリックトイレをきっかけに、公共空間のあり方について再考する機会を与えられたことに感謝いたします。敷地の恵比寿東公園は、緑豊かな児童遊園として普段から近隣の人々に親しまれている公園です。私たちはこの施設を単なるパブリックトイレとしてだけでなく、休憩所を備えた公園内のパビリオンとして機能する公共空間としたいと考えました。子どもたちから通勤中の人々まで、多様な利用者に配慮し、施設ボリュームの分散配置によって視線を制御しながら、安全で快適な空間の創出を目指しました。ボリュームを統合する軽快な屋根は、通風を促し自然光を呼び込む形態とし、明るく清潔な環境と同時に、公園内の遊具のようなユニークな姿を生み出すことを意図しました。タコの遊具によって『タコ公園』と呼ばれる恵比寿東公園に、新しく生まれた『イカのトイレ』として親しまれることを望んでいます。


最後に広尾東公園トイレを訪れました。


デザインは後智仁氏(クリエイティブディレクター・アートディレクター)。
1971年東京生まれ。91年武蔵野美術大学短期大学グラフィック科入学、同大学視覚伝達デザイン学科編入。95年博報堂入社。2008年WHITE DESIGN設立。おもな仕事に、ユニクロ・サスティナビリティ部門担当クリエイティブディレクター、atama plus株式会社ブランド戦略顧問、大阪経済大学人間科学部客員教授。 ファーストリテイリング・サステネナビリティーレポート、ユニクロ「ドラえもん・サステナモード」、Tシャツ購入でドネーションができる、UT「THE PEACE FOR ALL」。キリン「Tap Marche」など。近年は、広告やブランディングにとどまらず、ファッション、建築、ディスプレイ、アートと活動の場を広げている。
後智仁氏談
今回のプロジェクトの元となった『人はみんな違うという意味で同じである』という思いを表現するトイレを作りたいと思いました。安全、安心、清潔はもちろん、全ての人に優しいトイレにしたい。多くの人の生活と多くの緑に囲まれた公園内ということもあって、パブリックアートの様に生活の中にありながら、人に常に何か問いかけてくる様な存在。このプロジェクトの意義を人に問い続けるモニュメントのようなトイレになったらいいなぁと思っています。世界人口と同じ79億通りのライティングパターンが、昼は木漏れ日の様に、夜は月明かりや漂う蛍のように変化し続け、二度と同じパターンを見ることはないでしょう。

今年度より初の試みとして全4回の渋谷のトイレ巡り講座を実施しました。
次年度も引き続き実施予定ですので、皆様のご参加をお待ちしております。
今後も皆様の学びの好奇心を満たす一助となれるような講座を企画していければと思います!